#13 あるピアニストの心臓
日にちがすっかり空いてしまった。
この本はいよいよクライマックスに差し掛かっている。
今日は、実在したあるピアニストの心臓の話。
彼の遺体はパリの墓地にあるが、心臓はワルシャワにある。
彼は、せめて心臓だけでも祖国に埋葬されることを望んでいたからだ。
その心臓を極秘で運んだのは、姉のルドヴィガだった。
ルドヴィガには、どうしてショパンが死ななければならなかったのか分からない。
心臓のない死体を前にして
彼女は涙を流すどころか、激しい怒りにかられる。
分かる気がする。
怒りとはきっと、抱えきれなくなった悲しみのことなんだと思う。
だからいつも混乱がつきもので、
自分一人だと制御することが難しい。
人は正気を保ち続けるために、
誰かをそばに置いておきたいと感じるのかもしれない。
それにしてもこの作家は、
無気力、そこから湧き上がる感情を淡々と描くことに長けている。
ポーランドという苦難にまみれたお国柄のせいなのかな。