日々

日常の癒されたこと、楽しかったことのメモ

花束の重み

旅から帰り、気絶するようにベッドに倒れ込んで久々に熟睡をした。泥のように眠りに眠って朝の九時ごろ、インターホンの音で目を覚ます。そそくさと対応してくれた夫に何を頼んだのか尋ねると、彼は奥二重の目をしぱしぱと泳がせて、白々しくごまかした。別…

自らの手で節目を重ねる

結婚一周年記念と謳い、暑さを逃れて夫婦で那須塩原へ旅行に発った。 イベントに疎い私たちだけれど、職場の齢60を超えた同僚から、結婚記念日は毎年祝い続けているという話を聞いて、真似てみたくなったのだ。 生活は意識しないとどうしても間延びしがちに…

捨てる神あれば拾う夫あり

関東は10日ほど前に梅雨入りしたと聞いたのに、朝起きると部屋じゅうに燦々と金色の陽射しが降り注いでいた。すでに夏が始まったみたいだった。 ウキウキと洗濯物を干している夫に「友達とランチしてくるね」と伝え、ルンルンと跳ねるような足取りで電車に乗…

休むことは弛緩すること

お昼、夫がスマホを見ている隙に、彼のお皿からサラダをつまみ食いしていると「関東地方は明日から天気が崩れるらしいよ」と言われた。 外を見るとお日様が現れはじめたので「梅雨入り前に、青空の下で読書を思いっきり楽しまないと!」と謎の義務感が生じ、…

余白は心を耕してくれる

5/20(土) ここ数年で、春と秋は絶滅して、夏と冬だけが残った。 そう断言できるほど最近の気候は極端だけど、唯一、梅雨前のこの時期だけは外を歩くのに適した季節だ。 夕方になり、薄紫色のカーディガンを羽織って、夫とふたりで神楽坂を歩いた。 提灯や…

選ぶ本でその日の調子がわかる

大きな規模の本屋さんが好きだ。 落ち込んでいるときなんか特に、一反木綿のようにフラフラと入ってしまう。 本屋にいると、誰とも話さなくて良いのに刺激的な出会いが多くて非常に良い。 つい先日なんか『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学…

嫌なことぜんぶ忘れる味

お昼ごろ、夫からLINEが届いた。 「お仕事を早く終えられそうだから、時間が合えば家の近所をお散歩しよう」とのこと。 一日じゅう家にいた私は少しオシャレをして、18:00ごろに一緒に外濠の辺りをお散歩した。 最近は、梅雨前になると少し気温が上がって初…

楽しいことを集める

私は体力が人の半分しかない。 「だんだん暑く(寒く)なってきた」という感覚もない。急に汗びっしょりになったり震えだしたりするし、誰かと一緒にカフェに入ったらBGMと目の前で話している人と隣のテーブルで話している人の声をすべて同じ音量で拾う(注…

週末のんびりクラブ

労働者8年目ともなると賃金による自分の甘やかし方も大分上達したもので、仕事が終わったら電車に7、8分揺られるだけでふかふかソファにダイブできる仕組みを作るべくお家を買いました。そして玄関でルンバの自殺の第一発見者となります。うちのルンバは3日…

半年で5kg痩せた話

自粛開始の3月から半年で5kg痩せた。その後1kgほど増えて、昨年比-4kgで着地しそう。 100kg→95kgになるのと40kg→35kgになるのとでは話が違うので、参考までにBMI指数*1で言うと、ピーク時19.8→17.7まで減った。 誤解しないでほしいのが、私は運動が嫌いだし…

痛みがコントロールできないときに

歳を重ねれば重ねるほど、傷に過敏になる。小さな傷が増えるだけかもしれない。 料理をすれば指を切る。 執務室で机に脚をぶつける。 知り合いが増えて別れが生まれる。 自分を保護していた膜は成長とともに剥がれて、傷にさらされる機会が多くなる。 痛みを…

余所者になりきって、より多くを見る(ソール・ライター写真展)

見慣れている街に雪が降ったとする。そんなとき、みんなはどういう狙いでカメラを構えるのだろう。白く塗り替えられていくアスファルトとか、手を冷やしながら作った雪だるまとか、自分にもたらした感動と対峙して、画角に収めようとするはずだ。だから、ネ…

ウエルベック『セロトニン』

「ぼくは一人の女性を幸せにできたかもしれない」 ウエルベックといえば、愛が手に入らないことの苦しみを書く作家。 上記の一節は本作品からの抜粋で、ウエルベック文学の集大成ともいえる本書の内容がよくまとめられた一文だと思う。 物語はエリート階級に…

魅力的な文章ってなんですか

最近、社内文書を褒められて「つまらない文章が染みついたのかも」と不安になった。 私にとって魅力的な文章とは、誠実な文章に他ならないと思っているからです。 とはいえ勤務態度は誠実なつもりだし、社内文書を村上春樹チックにまとめ上げたいわけでもな…

鍋で作る 簡単ブラウニー(生チョコ風)

簡単に可愛い焼き菓子つくりたい! しっとり生チョコが食べたい!!! でもオーブンがない……。 そんな欲望を満たす、 なんとなく可愛い焼き菓子が作りたい人のための 失敗しないブラウニー情報です。 基本は混ぜて焼くだけです。 トッピングで苺とかバナナと…

簡単にスフレを作る

あるものだけで簡単に作れます。 技術は特にいりません。 〈材料〉 ・卵 1個 ・板チョコ 1枚 ・バター 40g ・小麦粉 大さじ1.5 ・(あれば)オレンジリキュール 好きな分量 ・砂糖 ・(あれば)デコポン 〈手順〉 ①マグカップの内側にバターを塗って、砂糖…

北ドイツ8日間

クリスマスシーズンに北ドイツに8日間ほど滞在していた。そのまとめ。(拠点:Berlin) ■街の様子 (1)街はカラフルだけど色が控えめで、統一感がある。 (2)ベルリンはとても広い。地下鉄かトラムが主な交通手段。 →ほぼ時刻表どおり!交通機関はマス…

#15 『逃亡派』を体験する

約二カ月前の話だが、自分の好きなものが分からなくなっていた。 案外ありがちな悩みだと思う。 これまで培ってきた財産が、逆に枷になっている気がした。 読書をしているときだけ 一人で好きなことを心から楽しめている気がしたので 自分の心を分析するよう…

#14 手元の端末に心を許す

年末年始は、おちついてゆっくり読書ができる。 あちこちから本を引っ張り出してきて 休憩がてら、この本を開く。 ネット国という架空の国が舞台になっている。 この本に出てきた中で、私にとって最も身近な国だ。 もはやインターネットの世界に住んでいると…

#13 あるピアニストの心臓

日にちがすっかり空いてしまった。 この本はいよいよクライマックスに差し掛かっている。 今日は、実在したあるピアニストの心臓の話。 彼の遺体はパリの墓地にあるが、心臓はワルシャワにある。 彼は、せめて心臓だけでも祖国に埋葬されることを望んでいた…

#12 ある日々は別の日々を引っ張り出す

職場で私の属していたグループが解体し、 ほかのグループと組み合わさった。 これまでのメンバーが気に入っていたのでショックだった。 でも心配はいらないだろう。 今は不自然に思えるいびつな体制でも そのうち慣れて また新しい思い出が染み込んでゆくは…

#11 カーテンの房飾りは何の役に立つ?

この断片集のなかで「逃亡派」とタイトルのつけられている章に入る。 いよいよ中核だ。 アンヌシュカと呼ばれる主婦が主人公らしい。 舞台はどうやらロシア。 暗闇の中でアンヌシュカは発見する。 ソファのカバーの色も、カーテンの房飾りも役に立っていない…

#10 失われた部位が痛む

もしも小さなものを見るのが得意な人と 大きなものを見るのが得意な人がいるならば 私は前者だと思う。 身体が人よりもすこし小さいから こまごましたものを触ったり 小さなものをよく眺めたりするのに向いている。 この先は公開解剖の話がしばらく続く。 ル…

#09 話すことで変化をもたらす

話すことは、立ち入ること。 自分の状況を名付けて、 ことばを探して 試しにあてがってみること。 灰かぶりをお姫様に変身させるかのように。 「話して!話して!」という章を読んで思った。 せっかく生きている間に 素敵な言葉をたくさん蓄えてきたのなら …

#08 めぐり合ってしまったら

風邪をひいた。 頭蓋骨にセロハンをかけられたみたいだ。 外の世界がいつもより少しぼやけている。 本を開く。 解剖標本の保存を研究する博士が登場する。 とある夫人の家に訪れる。 彼女はとてもフレンドリーな人柄だが、 博士からすれば、彼女のもてなしな…

#07 緩急をつける

断章は緩急が激しい。 情報のたくさんつめこまれた箇所と 息抜きていどのちょっとした描写や小話がはめ込まれている箇所がある。 なんだか日々の生活みたいで、それは私を飽きさせない。 人生に飽きないためには緩急をつけるのが一つのコツなのだ。 この物語…

#06 占いに頼らなくて良い

知っているってなんだろう。 今日、「ユカタン半島風スープ」という料理に出会った。 「ユカタン半島って知っている?」 と聞かれて、私はうなづいたけれど、 そういう名前の島が存在することと 位置はメキシコのあたり、ということしか知らない。 知ってい…

#05 背負っているものが言葉に出る

クニツキの妻子はまだ見つからない。 捜索の合間に、また小さなカフェに入る。 この小説では、よくカフェと思われる場所で男たちがビールを飲んでいる。 ポーランドの風景なのだろうか? そこでは誰も彼に関心がなく、安堵する。 人々の顔の、細かい差異の一…

#04 時間との距離がない

本を開く。クニツキという男が突然あらわれる。 断片なので、唐突さには耐えなければならない。 そういえば今日、渋谷区立中央図書館まで散歩をし、緑に囲まれた小道を見つけた。 両脇に花が植わっていて、雨上がりだったので甘くやわらかい香りが立ち込めて…

#03 失敗を見つける

仕事を持つと、自分の性格上の欠陥が失敗となって浮き彫りになる。 書類作成、期日管理、人間関係…… 誰だって思い当たる節があるだろう。 本当はただ思考して、問題点を解消すればいいだけなのに ミスを起こすたびに悩んでしまうのはきっと、 その失敗こそが…