日々

日常の癒されたこと、楽しかったことのメモ

捨てる神あれば拾う夫あり

関東は10日ほど前に梅雨入りしたと聞いたのに、朝起きると部屋じゅうに燦々と金色の陽射しが降り注いでいた。すでに夏が始まったみたいだった。

ウキウキと洗濯物を干している夫に「友達とランチしてくるね」と伝え、ルンルンと跳ねるような足取りで電車に乗り、東京駅に着くやいなや予定を一日勘違いしていたことに気づいて引き返す。

「ランチの約束、明日だった……」

夫にそうLINEすると、「じゃあせっかくだから、僕と一緒にお出かけしない?」と返信が届いた。

彼には彼なりの予定があっただろうに、私の落胆を察して、躊躇なく手を差し伸べてくれるその温かさに救われた。私は彼のこういうところが好きで結婚したのだったと思った。

 

そんなわけで、かねてより気になっていたお店で急遽夫とランチをすることに。

神楽坂のメイン通りから路地へ入り、曲がりくねった石畳の上を歩いて階段を少々下ると、坂(ここは昔「芸者小道」と呼ばれていた坂らしい)の途中に立派な和風の建物を発見。

 

 

 

そのなんとも老舗らしい外観に圧倒されるも、看板を見て、お目当てのお店であることを確認し、暖簾をくぐる。

すぐに着物を着た仲居さんが現れて、二階のお座敷に通してくれた。

私はここの名物であるうどんすきを、夫はこれまた名物である親子丼を注文した。

 

 

うどんすきはガス管を引っ張ってきて温めるしくみらしい。

見た目からして既に心が温められる。

ハマグリが開いた頃が食べごろとのこと。

味はもちろんおいしくて、透明なお出汁の繊細な味わいが夏バテ気味の胃に沁みた。

親子丼も、甘めのお出汁で煮たトロトロの卵と小さくカットされた鶏肉が溶けるように混ざり合っていて、これまで食べた中でもっとも美味しい親子丼だった。

 

「今日は出てきてくれてありがとう」夫にそう感謝を伝えると、「レナちゃんが落ち込むだけの一日にはしたくなかったから」と言葉を返してくれた。

20代の頃のような体力は失われ、上手くいかないことは多々あれど、私が毎日上機嫌で暮らすことができているのは、紛れもない彼のおかげなのである。

今日は予期せず良い休日になったな、明日も良い休日になるだろう。そう思えるような一日だった。